会員の皆様へ
令和元年も残り少なくなってきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
11月は雨の日が多く、また気温も低く、暗渠作業はとても大変でしたが、良い田圃を造り、良いお米を作るためには、欠かせない重要な仕事です。 大潟村は干拓地のため、入植当初は地下水が高く、地盤も安定せず、トラクターが動くと、田圃の表面が、地震が来た時のように波打ちました。 また、トラクター、田植え機、コンバイン等の農業機械が、農作業中、田圃の中に半分ほど埋まり、自力では這い上がれなくなり、大型ブルドーザーで引き上げなければならないことが何回もありました。 農業機械が田圃に埋まった時は、他の農家から助けてもらわなければなりませんが、他の農家も農作業中のため迷惑をかけるわけにはいきません。そのため、田圃を固くし、農業機械が埋まらないための暗渠が最も重要な仕事になりました。 大潟村は、数千年かけて周辺の山々から流れ込んだ細かい土の積み重ねでできた土壌で、和菓子の羊羹のような構造になっており、排水が極めて悪い農地です。 また大潟村は、湖に周囲54㎞の堤防を築き、中の水を排水してできたマイナス4mの農地のため、水門を開けば水は自動的に入りますが、雨水を含め全ての水は、ポンプを使わなければ排水することができません。 そんな農地のため、大潟村の土地改良事業は、排水対策が基本になっております。 私たち農家は、農作業中に農業機械が土の中に埋まらないようにするため、必死になって暗渠作業に取り組んできましたが、暗渠は、多額の投資がかかるだけでなく、10年経ったら、再度、暗渠作業を繰り返さなければなりません。 それは、暗渠に使われる籾殻が、土の中で徐々に腐敗して行き、暗渠の効果がなくなるためです。私も入植以来、10年おきに4回から5回暗渠を行ってきましたので、田圃には暗渠のパイプが2m間隔にビッシリと入っており、50年の苦労の証になっております。 しかしながら、50年の苦労が実って、田圃の乾燥も進み、今では農業機械が田圃に埋まることもなくなり、安心して農作業ができるようになりました。 今年の暗渠作業は、5回目から6回目の暗渠作業になりますが、10年後、20年後も暗渠作業を行わなければ、営農ができなくなるのが大潟村の宿命です。 今年は4次入植者の50周年記念祝賀会が開催され、私も出席しました。 大潟村の入植訓練所に入所した、50年前の11月13日に住民票を大潟村に移したので、その日が入植記念日になりました。 私は21歳で入植したので入植者の中では一番若く、当時の入植者の平均年齢は28歳とのことで、亡くなった方もたくさんおられ、祝賀会には息子さんたちの出席もたくさんあり、50年と言う時代の長さが感じられました。 入植と同時に始まった減反政策も昨年で終わり、新しい農業政策の時代が始まりましたが、全国の農業者の平均年齢が69歳になったため、離農者が激増し、数年後には、米の増産政策が必要になるのではと、言われております。 世界的な人口増による食糧不足、世界的な異常気象による生態系の変化等、これからは食糧問題が、とても重要な課題になってくるのではないでしょうか。 日本は50年間、米の減反政策を続ける一方で、食糧の輸入量は増え続けるという世界でも珍しい国でしたが、離農者の急増により、日本の主食であるコメの安定生産にも赤信号がともってきました。 これから2、3年の間に、10年後、20年後の日本の米作り農業のあり方を決めなければ間に合わなくなり、タイムリミットが近づいております。 残念ながら、日本の農家は小面積の農地のため、自分の農業を続けるか辞めるかは個人の自由であり、多くの農家は農業を辞めることを決めております。 多くの農家が農業を辞めることは、耕作放棄地があふれることになり、日本の農業地帯は、耕作放棄地のため草原が広がり、住むことができなくなります。 自分が生まれ育った故郷を草原にしないために、今こそ行動を起こさなければならないと考えております。 私は自分のことも充分にできないのですが、これからの長い冬、改めて日本の農業問題を考えたいと思っております。 本年も、大変お世話になりました。 来年もまた何卒宜しくお願い申し上げます。 令和元年12月 大潟村あきたこまち生産者協会 涌井 徹
by a_komachi
| 2019-12-01 08:30
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