会員の皆様へ
今年は、生育遅れと長雨のため2週間ほど刈り取りが遅れましたが、味も良く例年以上においしいお米になりました。
大潟村の農家は、刈り取りが終わると、今度は土中の水を抜くための暗渠工事を11月下旬まで続けます。 11月になると寒さも一挙に進みますが、暗渠工事をしている田圃とそうでない田圃は、秋に乾燥状態が大きく変わるため、多くの農家は毎年のように暗渠工事を繰り返し行います。 入植以来30年ほどは、暗渠工事が十分できなかったため、少しの雨でも田圃が軟らかくなり、収穫後の田圃はコンバインのキャタピラーの溝がたくさんできましたが、今は暗渠工事の効果があり、長雨になっても田圃にキャタピラーの溝がつかず、とても綺麗になっております。 しかし、暗渠の材料は籾殻を使っているため、10年ほどすると籾殻も腐り、暗渠の効果が少なくなるので、また追加の暗渠工事をしなければなりませんが、干拓地の大潟村で農業を続けるためには、暗渠工事を繰り返し続けることが必要条件になります。 10月の通信で、数年ぶりに大潟村に2回目のクマが出たとの紹介をしましたが、1ヶ月ほど行方不明になっていたクマは、20キロ離れた所で発見されて捕獲されました。 大潟村でクマが発見された1週間後に、隣町にもクマが出たとのニュースがありましたが、クマは1日に30キロも40キロも走り回るというので、同じクマかどうかわかりませんが、とりあえず一安心しております。 48年間続いた減反政策が来年終了しますが、減反廃止後の新しい農業システムの構築のため、今年から玉ねぎの大規模機械化一貫体系の確立に取り組んでおります。その第一歩として、10月中旬から玉ねぎの定植に取り組んでおりますが、40年前に玉ねぎの栽培をした時は、植えるのも、収穫するのも、乾燥するのも、皆、手作業でしたが、今は全て機械化されております。 定植機も四条植えで、1日1.5ヘクタールくらいの植え付けができ、植え付け状況もとても良く、私が手植えをした40年前と比較すると、あまりにも上手に植えられる状況を見て、とても感動しました。 11月上旬には、山間部の耕作放棄地にも玉ねぎのの植え付けを行いますが、圃場の幅も狭く段差が2メートルくらいあり、トラクターを落とすと大事故になるので注意しなければなりません。 そこは県内有数のクマの生息地で、至る所にクマが出ますが、他の地域にある「クマ出没注意」の看板がありません。クマが出るのは当たり前のこととなっているようですが、農村に人が住まなくなると、そこは自然に帰り、クマやカモシカ、タヌキ、キツネたちの楽園に戻っていくのかもしれません。 畑の横に植えてある栗の木の上には、クマが栗を食べるために枝を折って作った「クマのやぐら」があります。また、柿の木の下には、柿を食べに来たクマの大量のフンがあり、クマの大きな足跡と爪痕が手形のようにはっきりついており、クマが「俺の食べ物だ」と宣言しているようです。 クマは、朝早くと夕方に多く出ると言われますので、仕事は昼間だけにして、クマに会わないようにしたいと考えておりますが、クマに出会った時はどうするのか、深く考えないようにしております。 住民の話を聞いてみると、戦後、樺太から引き上げてきた人たちが昭和23年に入植したとのことでしたが、その年に生まれた私が69歳になって、広い大潟村から、玉ねぎを植えるためにクマの生息地に来たのも、何か因縁があるのでしょうか。 稲刈りが終わると、協会にはたくさんの農家や農業団体が視察に訪れる予定になっており、これからの農業をどうしたらよいのかと聞かれますが、そのことについては何十年も話し合われているので、もう答えは出ています。 全国的な農業者の高齢化と後継者不足により、農業人口が急速に減っているため、日本農業は農地の集積と共同化や法人化を進めて、優良農地が耕作放棄地になるのを防ぐとともに、生産コストを下げ、国際化時代に対応していかなければなりません。 このことは、多くの農業関係者は分かっていることですが、実際に踏み切ることができないでおります。 48年前に減反政策が始まった時も大変でしたが、48年間続いた減反政策が終わる来年からの農業はどうすればよいのか、多くの農家が悩んでおりますが、農業の将来は、農家一人ひとりが真剣に考えた時に初めて見えてくるのではないでしょうか。 これから寒さ本番になりますので、皆様にはお身体にお気をつけ頂きたく存じます。 平成29年11月 大潟村あきたこまち生産者協会 涌井 徹
by a_komachi
| 2017-11-01 08:15
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