会員の皆様へ

早いものでもう5月、耕耘、代掻き、田植えと1年で一番忙しい日々が続きます。
4月は寒暖の差が大きく、暖かい日が続いたかと思うと急に寒くなり、冬に戻ったのかと思うほどでしたが、どんな天候になっても、春に種を播き、田植えをし、稲を育てるという農家の仕事は変わりありません。

大潟村の農地は粒子が細かく、雨が降るとすぐに軟らかくなり、農作業がとてもやりづらくなります。そのため暗渠工事を行い、どんな天候でも農作業ができるようにしますが、多額の資金がかかり、とても大変な仕事になります。
暗渠工事は、農道から排水路まで150メートルの距離を、幅20センチ、深さ1メートルの溝を掘り、穴の開いた直径8センチのパイプを入れ、その周りを籾殻で囲います。
最初の頃は効果がある暗渠も、徐々に効果が少なくなり、10年ほどすると再工事が必要になりますが、干拓地の大潟村で農業を続けるには、100年先も、暗渠工事は必要不可欠な仕事になります。

田植えは5月上旬から始まり、下旬までかかりますが、雨の日や風の強い日はできません。田植えをしながら、代掻きや育苗ハウスの管理をするので、田植えが終わるまでは早朝から夕方まで気を抜くことができません。
小さな苗は、田植えで、暖かいハウスの中から雨風にさらされる自然界に移されるので、保温のための水が必要になりますが、田圃に高低差があると、小さな苗は水に沈んだり、表面に出たりして、生育が不揃いになります。

そのため、田圃を均平にすることが最も重要で、高い技術力が必要になりますが、私はその技術力がなく、入植以来、田圃の高低差に悩まされました。
10年程前に、レーザー光線を利用した整地方法を取り入れたので、ようやく人並みに均平にすることができるようになりました。
田植えをしてから5ヶ月間、長雨、台風、病害虫と、米作りは様々な障害に繰り返し見舞われますが、その1つ1つの障害を乗り越えて、はじめておいしいお米を収穫することができます。

48年間続いた減反政策がようやく来年廃止されることになるため、廃止後の日本農業はどうなるのかと、多くの農家や農業関係者の方が協会を訪れます。
私は18歳で農業を始める時に、「若者が夢と希望を持てる農業を創造する」ことを、人生の目標にし、そのことだけを考えて50年経ちました。
若者が夢と希望を持てる農業とは、生産だけでなく、加工や販売にも取り組むことであり、そうすることで農業に若者が参入できると考えておりました。
また、私は6メートルも雪が積もる雪国に生まれましたので、雪に負けない農業の在り方を常に考え続け、たどり着いたのが、春から秋に栽培した米を、1年間通して加工し、販売することでした。

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米を酒、餅、米菓に加工することは、既に大手食品メーカーがやっておりましたので、農家ができることは何かと考えた時に、農家が自分で栽培した米を、自分で販売することで、雪に負けない農業ができるのではと考えました。
残念ながら、自分で栽培した米を自分で販売することは、今でこそ農業の6次産業化として国も推進しておりますが、当時は食管法違反と言われ、自分の米を自分で売ることは悪いことだと言われた時代でした。

しかし私は、農家が自分で栽培した米を、自分で販売することは、農家が自立できるだけでなく、日本農業の発展につながると確信し、どんなに強い圧力を受けても、諦めることなく頑張ってきました。それは、今でも続く、私の50年間の農業人生の信念となりました。
45年前に玄米を販売し、29年前に白米を販売し、23年前に餅や赤飯を造り、16年前に発芽玄米や栄養機能食品を造りました。
更に、19年前に米めんを造り、5年前にアレルギー対応食品や非常食の開発にも取り組みましたが、どんなに頑張っても、「若者が、夢と希望を持てる農業の創造」への道に近づくことはできませんでした。

私に残された時間も少なくなり、私にはできないのかと諦めかけたある時、私の耳に、「グルテンフリー」という言葉が聞こえました。
米粉にはグルテンが無いため、米パンや米めんがおいしくできず、とても苦労しましたが、グルテンフリーという言葉は知りませんでした。
インターネットで調べてみると、グルテンフリーとは、小麦等のグルテンを含む食事をしないことで、健康になる食生活ということでした。今まで米粉食品に取り組み、米粉にはグルテンが無いことでとても苦労をしましたが、今度は、グルテンが無いことで身体が健康になると言うのですから、驚きました。

グルテンフリーという言葉を聞いてから、1年4ヶ月、協会はグルテンフリーパスタだけでなく、パスタソース、カレー、シチュー、パン、ミックス粉等、たくさんのグルテンフリー食品を開発しました。
常温のグルテンフリー食品シリーズが完成したので、今度は冷凍のグルテンフリー食品シリーズの開発に取り組んでおります。

日本に小麦が輸入されてから、日本の米の消費は減り続け、48年間、減反政策を続けながらも、画期的な米の消費拡大の道を開拓することはできませんでした。
米粉を使ったグルテンフリー食品の開発と普及は、日本の米農業の発展だけでなく、グルテン障害が社会問題化している、世界の小麦を主食としている国々のグルテン障害の改善にも大きな貢献ができるのではないでしょうか。

国も3月末に、米のノングルテンの基準を設定し、ノングルテンの米粉を世界に提案していくことになっており、グルテンフリー食品の開発と普及は、「若者が夢と希望を持てる農業の創造」に大きく近づくことができるのではと考えております。
日本の米は、半世紀に及ぶ減反政策により、土俵際まで追い込まれましたが、米粉を利用したグルテンフリー食品の開発と普及により、ようやく反撃のきっかけをつかむことができたのではないでしょうか。

これから暑くなりますので、お身体にお気をつけ頂きたく存じます。


平成29年5月
大潟村あきたこまち生産者協会
涌井 徹


# by a_komachi | 2017-05-01 09:00