会員の皆様へ
今年の冬は雪が少なかったため、山の雪水を使用する山間部では、田植期の水が不足するのではと心配しておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

2月は、季節外れの暖かさが続き、冬野菜の生長が早く、白菜が大きくなり過ぎたとのニュースがありましたが、米作り農家は、今年も高温障害が発生するのではと、今から心配しております。
3月になると、タマネギの追肥や、種籾の準備、育苗ハウスの準備と、春の農作業が始まりますが、学校を卒業したばかりの農業後継者は、親の仕事を見たり、隣の農家の仕事を見たりと、見よう見まねで仕事を覚えていきます。

大潟村でも、9割以上の農家が後継者の時代になり、減反政策という言葉も分からない農家も出てきました。
そのため今年から、大潟村の若い後継者と一緒に、今日の大潟村の農業はどのような経緯を踏まえてできたのか、これから、どのような農業に取り組んだら良いかについて、一緒に勉強会を行いたいと考えております。

私たちが大潟村に入植した時は、減反政策が始まったため、否応なしに、様々な農業問題を話し合う機会がたくさんありましたが、減反問題がなくなった今、大潟村では、農業問題を話し合う機会が少なくなりました。
減反政策は、米を減産し、畑作物を栽培することでしたが、急速に進む農業者の減少により、稲作も畑作も今までの生産水準を維持することができなくなり、国民食料の安定供給ができなくなります。

急速な農業者の減少に対応するにはどうしたら良いのか、春の農作業を進めながら、頭の中で何十回も何百回も自問自答を繰り返し、出ない答えを探し続けております。
40代、50代の頃は、将来の話をする時に、自分の年齢を意識することはありませんでしたが、70歳を超えた頃から、将来のことを話す時に、自分の年齢を意識するようになりました。

会員の皆様へ_a0108746_12480627.png


75歳になった今、将来の話をする時、その時に自分は生きているのかと考えるようになりました。
仮に自分が生きているうちに、私の考えていることが実現できなくても、私の考えていることが、社会的意義のあることであれば、誰かが後を継いでくれるのではと期待しております。

協会には多くの農業者が視察に来られますが、皆、自分たちの地域に農業後継者がいないことに悩んでおります。
先月のこまち通信にもあるように、私は来社される方に、これからは、農家個々で大きな投資をするのではなく、地域の農業者が一緒になって取り組むことが大事だと話しております。

個々の農業者がどんなに頑張っても、地域農業を守ることはできませんが、地域の農業者が一緒になることで地域農業を守ることができます。
協会を視察される農業者の中でも、若い人たちが多い農業地帯は、前向きに考える方が多いように感じられます。

それぞれの農業地帯には、それぞれの課題がありますが、その課題の多くは、私たちが経験したことであり、その一つひとつの課題を乗り越えることで、新しい道が拓けるのではないでしょうか。

ピンチになった時こそ、チャンスがあると言われておりますが、大きなピンチの今こそ、農業が発展するチャンスがあるのではないでしょうか。
私は56年前、農業に取り組むことを決めた時、「若者が夢と希望を持てる農業を創造する」と心に誓った人生の目標に向かって、試行錯誤を繰り返しながら前に進んでおりますが、その目標が見えなくなった時が、私が農業をやめる時であり、その目標を忘れない限りは、まだまだ前に進みたいと考えております。

令和6年3月
大潟村あきたこまち生産者協会
涌井 徹

# by a_komachi | 2024-03-01 11:28